今、スーパーの超大型化&郊外化で、近所のスーパーが撤退し、日常の買い物に不自由している人たちが増えてきています。いわゆる「買い物難民(買い物困難者)」と呼ばれる人たちです。経産省の統計では、その数、全国に約700万人。では、その方たちは日々どうやって暮らしているのでしょうか?
食べるものを買うのは、いつもコンビニ。
だから生鮮食品はあまり口にしない。
この秋は、まだサンマを食べない。
たまに近所に住む娘に頼んで、車に乗せてもらい
スーパーに連れて行ってもらう。でも、少し気を遣う。
宅配を利用するときもあるけど、やっぱり見て買いたい
80歳を過ぎてるのに、買い物のためにまだ車の運転を続けている。
でもシンドイ。
中には、5,000円ものタクシー代を払って、スーパーまで買い物に行くというお婆さんもいたほどです。
ネットスーパー年齢的にとてもついていけない。
お弁当の宅配一ヶ月もすると飽きてしまう。
宅配注文してから届くまでのタイムラグが不満。
送迎サービス気を遣うし、時間を合わせるのが不便。
ここ最近、買い物難民対策が連日のようにニュースになっていますが、それぞれに弱点を抱えているようです。そもそも「買い物」という行為は、生活の中の「お楽しみ」でもあります。現物を「見て・触って・感じて・選んで」初めて本来の「買い物」と言えるのではないでしょうか。そこで、これらの様々な問題を何とか解決できないか?と考えた結論が「移動スーパー・とくし丸」でした。
玄関先まで軽トラックで出向き、会話し、買い物をしていただく。買い物の楽しさを残しつつ、「買い物難民」と言われる方々を支援できればと考えています。軽トラックといえども、冷蔵庫付きの専用車ですから、生鮮食品も積み込んだそのアイテム数、何と400品目以上になります。また、買い物だけに止まらず、我々「とくし丸」のスタッフが、「見守り隊」としての役目を果たすことも目指します。
スーパーマーケットは、店舗が大きければ大きいほど品揃えが豊富になり、魅力的だと考えられがちです。が、本当にそうなのでしょうか?
高齢者の方々からは「広すぎて、目的の商品を見つけるのに苦労する」「必要な商品を買い揃えるのに歩き疲れる」という声があがっています。若く健康な人達にとっては、品揃えの豊富さはとてもありがたいことなのですが、お年寄りには、ソレがかえって大きな負担になっています。
我々が運営する移動スーパー「とくし丸」は、軽トラックを使用しています。そのコンパクトな荷台に「これでもかっ!」と積み込んだ商品は、約400品目、約1,200〜1,500点にもなります。
もちろんそれでは「物足りない」と思うかもしれませんが、ソレがそうでもないのです。
何故なら、「とくし丸」スタッフがおばあちゃんたちにお薦めしたい商品ばかりを選りすぐり、荷台に搭載しているからです。そう、いわば「とくし丸」は、究極の「セレクトショップ」でもあるのです。
食品販売だから、3日に1度の訪問を可能にしています。お客さんは、皆さん「ウエルカム」の方ばかりです。それどころか、「来てもらわないと困る」というおばあちゃんもたくさんいます。週に2回、直接顔を会わせて会話する。その行為は、実の息子さんや娘さん達よりも、ずっと頻度が多い場合すらあります。
そして、そんな関係が数ヶ月以上続くと何がおこるか?「とくし丸」の販売スタッフは、もはや実の子供か孫かと勘違いするくらいの親しい関係になってきます。お客さんとの間に信頼関係を築くことができれば、その先には食品以外の商品、あるいはサービスの提供も可能になります。高齢者の「要望」に何でも答える。「とくし丸」の最終目標は、おばあちゃんたちの「コンセルジュ」です。
週に2回、お家に訪問していると、度々「次に来るときは、コレを持ってきて」という声をいただくことになります。それらのリクエストに最大限応えることで、「とくし丸」は「御用聞き」の役割も果たすことになるのです。そして中には、思いも付かない「レア」商品の要望もあったりします。
机上の「ネット・スーパー」に、高齢者は反応しません。「とくし丸」は、ヒューマン・ネットワークを活用した、いわば「ヒト・ネット・スーパー」なのです。
そして、昔には、普通にあった「御用聞き」商売を、「とくし丸」がもう一度、今の社会に復活させることになるのです。
当たり前のことですが、「とくし丸」 の販売パートナーは、全てのお客さんと顔を合わせ、視線を交わし、話をすることになります。もちろんそうしなければ、本来の目的である「販売行為」 は成立しないのですから。要するに、全員のお客さんと「対面販売」することになるのです。
この「カンケイ」は、とても「ツヨイ」です。なので、試食や試飲だって無理することなく、自然な流れの中で行うことが出来ます。そしてソレは、押し売りではない「提案型販売」となり、結果としてお客さんにも喜ばれることになります。また、この「関係性」を活用すれば、様々なメーカーの「サンプリング調査」だって、難なくこなすことができるのです。
売上を上げることはとても大切なことですが、でも決して「売りすぎる」ことだけはしないよう心がけています。大切なお客さんが、買いすぎて、食べきれなくて、賞味期限を切らせて、食品を「捨ててしまう」。そんなことだけは、絶対にさせないように。 だから、「どうですか?」「買いませんか?」等の表現は禁句です。「今日は、コレを持ってきてますよ」「コレが美味しいですよ」という情報をお届けするだけにしています。
お客さんと末永く信頼関係を保つためにも、「売りすぎない」ことは、とても重要なポイントです。3日前に買ったはずなのに、また買おうとする場合、まだ残ってないかをちゃんとチェックして、場合によっては「売り止め」することすらあり得ます。その行為が、長期的には、我々の売上アップに繋がって行くのです。
徒歩圏マーケットといわれる半径300m圏内に、生鮮3品を扱うお店が存在する人は、とてもラッキーな立地に居住しているといえるでしょう。例えコンビニがどれだけ出来ようが、やはりスーパーマーケットの品揃えとは違います。特に高齢者の方々は、「コンビニでは満足できない」と考えます(コンビニは、限りなくスーパーマーケットに近づいてこようとするでしょうが)。
我々が、あえてミニマムな軽トラックを使用しているのは、路地裏の細い道にも難なく入り込んで行くためです。そして「玄関先で開店する」 ということを基本にしています。まるで「街の毛細血管」 となることで、「コンビニよりコンビニエンス」 な「移動スーパー」 となり得るのです。
我々は、単なる「移動スーパー」を始めたつもりはありません。一つずつは「小さな商売」かも知れませんが、ソレが何十台、何百台、何千台となったとき、もはや「移動スーパー」という概念を越えることになります。
食品販売をベースに創られたヒューマン・ネットワークだからこそ、この「インフラ」 にあらゆる商品やサービスを載せていくことができるのです。事実、軽トラックには乗りきらない大きな商品(フトン、ストープ、衣料品、100 食以上のお弁当、お中元、お歳暮、おせち料理、クリスマスケーキ等)の受注実績があります。さらに、食品メーカーからのサンプリング調査依頼にも対応しています。
スーパーマーケットが、新たな「インフラ」を手に入れることで、百貨店の「外商部」を持つのと同じような効果を発揮でき、次のビジネスモデルを構築することにも繋がります。
成功した起業家のほとんどに共通するのは「成長市場に参入した」ことではないでしょうか?もちろんその経営能力もさることながら、やはり需要が拡大する市場に乗り出したからこそ「大きな成功」を手に入れることができたのだと考えます。
今の「低成長時代」の中で、数少ない「拡大市場」が、まさにこの「移動販売」 の分野です。団塊の世代が高齢化していく向こう十数年は、間違いなく需要は拡大します。そして、「移動販売」 という流通形態そのものが、世に中の「スタンダード」「当たり前」になる日が必ず来るだろうと予測します。
ブランド・ネーミングに込められた想いは、社会貢献をする「篤志家」からいただいた「篤志丸」=「とくし丸」です。もちろん、徳島からスタートしたという意味もありますが、全国に通用するよう、意識して名付けました。
地域で活躍するスーパーマーケットが、この「とくし丸」という統一ブランドで展開することによって、巨大資本、大手組織に対抗することができます。地域連合を創るためにも、ゆるやかな「繋がり」を持って有機的に機能していく、まさに「スイミーの話」のような仕組みを構築したいと考えています。
全国で展開しているとくし丸では、各地域の地方自治体(県、市、町、区)等と「見守り協定」を締結しています。それによって、社会福祉協議会、地域包括センター、ケアマネージャー、民生委員等との連携が図りやすい立場となっています。 「見守り協定」は、ガス会社や電力会社、新聞販売店等とも締結している場合が多いですが、我々のように、週に2回、直接顔を合わせ会話するという、濃密な関係にはなり得ません。しかも対象者は、まさに「見守り」が必要と思われる高齢者がほとんどを占めます。だからこそ、その地域ではとても重要な「見守り役」として役目を果たすことができるのです。
町の中に、昔からある個人商店。そんなお店にずっと営業を続けていただくために、あえて「半径300m」 には、立ち入らないようにしています「徒歩圏マーケット」 といわれるその商圏に「とくし丸」が入り込むことで、個人商店の営業に負担をかけてはいけない、そう考えて「300m ルール」を守るように心がけています。
もちろん、お客さん優先の視点から、「要望があれば訪問する」ということにしています。
もちろん「お客さん」がいてこその「とくし丸」です。が、この「移動スーパー」を運営する側の中では、販売パートナーが「主役」であると考えています。スーパーは、季節に合わせてお客さんに喜んでいただける「商品」を提供する。そして、本部は、効率の良い売上を上げるための「顧客情報」を提供する。「商品と情報」を適切に供給することで、販売パートナーが仕事をしやすい環境を作ることが大切です。そして、スーパ一、本部、販売パートナーの三者が協力することで、より売上を上げられる仕組み作りを目指します。
薄皮を、1 枚1 枚重ねる。ソレは、実にマドロッコシイ効果しかないように思われます。が、薄ければ薄いほど、重ねれば重ねるほど、その1 枚ずつはピッタリとくっついて、薄皮とは思えないほどの強固なカタマリとなっていくのです。ブロックを重ねれば、簡単にできる厚みや高さを、わざわざ1 枚ずつの薄皮で築こうというのですから、手間ひま労力時間がかかって当たり前。でも、だからこそ、ソレでしか築けない土台を、日々、「とくし丸」は作り続けているのです。歩けば歩くほど「ムクワレル」。需要調査の大切さを十分に理解し、この土台の上に、どんな事業を創り上げることができるかを、イメージしながら事業を進めています。